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ノド(咽頭)の癌

ノド(咽頭)の癌

咽頭(ノド)とは解剖学的には鼻の奥から食道まででの管状の構造です。
周囲を粘膜と筋肉で囲まれ、呼吸や食物の通路となります。
咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に分類されます。
以下に3つの部位の癌について説明します。

I 上咽頭癌

 上咽頭は、鼻腔(びくう)の奥で、口の方から見ると口蓋(上あご)の裏側になります。上咽頭の上は脳を支えている頭蓋底になり、また左右両側には耳管があり、中耳とつながっています。
上咽頭癌の頻度は10万人あたり約1人と言われています。

 上咽頭は症状の出にくい部位で、初期のうちは自覚症状がみられないことがあります。鼻閉、鼻に血が混ざる、などの鼻の症状、あるいは耳閉感、難聴、等の耳の症状から上咽頭癌が発見されることがあります。耳の症状は前述のように上咽頭には耳管がつながっているため、癌の影響で耳管が狭くなったり、滲出性中耳炎を起こすためです。また、頸部リンパ節の腫れ(リンパ節転移)から診断されることもしばしば経験されます。さらに、上咽頭癌が頭蓋底に浸潤すると、物が二重に見えるなど脳神経麻痺の症状が出ることも知られています。

 上咽頭癌を疑った場合には、まず後鼻鏡という鏡や内視鏡で上咽頭を確認します。そして癌の可能性があると判断すると、その部位の組織の一部を採って組織検査を行って診断します。上咽頭癌の組織型(癌のタイプ)は扁平上皮癌や低分化癌というタイプが多いですが、悪性リンパ腫が発生することもあります。

 癌と診断されると、癌の上咽頭での広がり、リンパ節や他臓器への転移などを確認するために、CTやMRIなどの検査を行い、病気の進行度を決めます。

 治療方法は病気の進行度によって多少異なりますが、上咽頭癌の場合は比較的放射線治療が奏功する場合が多く、また、上咽頭自体が手術が難しい場所であることもあり、殆どの症例で放射線治療、および抗がん剤の治療が行われます。

Ⅱ 中咽頭癌

 中咽頭は口を開いた時に見えるノドの突き当りです。もう少し詳しく言いますと、上あご(口蓋)の後ろ半分の柔らかい部分(軟口蓋)、ノドの突き当たりの壁、口蓋扁桃、舌の付け根部分(舌根)が含まれます。頻度は10万人あたり約1人と言われています。

 中咽頭癌は、初期のうちは自覚症状がみられないことがありますが、初期症状としては、飲み込むときの違和感、長引くノドの痛み、などのノドの症状に加えて頸部リンパ節の腫れが見られることがあります。

 診断は直接中咽頭を観察して、癌の疑いのある組織を採取して組織検査を行います。中咽頭癌も扁平上皮癌が多いですが、扁桃から悪性リンパ腫が発生することがあります。癌の診断が得られれば、上咽頭癌と同等に、CT,MRIなどの検査で全身をチェックして進行度を判断します。

 悪性リンパ腫の場合は抗がん剤治療が中心ですが、扁平上皮癌の場合は、手術と放射線治療、抗がん剤治療を併用して治療を行うことが一般的です。

Ⅲ 下咽頭癌

 下咽頭は中咽頭と食道の間に位置し、喉頭や気管の後ろ側にあります。
下咽頭癌の頻度は10万人あたり約2人と報告されています。

 下咽頭癌は上咽頭癌や中咽頭癌と同様に、初期の頃は特有の自覚症状がないことも多いです。嚥下の際の違和感や痛み、長引くノドの痛み、声がかすれる、頸部リンパ節の腫れ、などがきっかけで発見される場合が多いと思われます。

 下咽頭癌の疑いがある場合には、まず内視鏡などで下咽頭を丹念に観察します。下咽頭の一部は嚥下する時以外は閉鎖しているため、非常に見にくい場所があり、入念に観察する必要があります。腫瘍組織と思われる部位があれば、そこから組織検査を行って診断をつけます。下咽頭癌の病理組織型はほとんどが扁平上皮癌です。

 下咽頭周囲への癌の進展具合、頸部リンパ節転移、他の臓器への転移を調べるために、CTやMRI検査を行うことは、他の悪性腫瘍の場合と同じです。また、下咽頭癌は食道癌や胃癌を合併していることがあるので、食道、胃の内視鏡検査も行われます。このようにして進行度を評価します。下咽頭癌は早期発見が難しい癌の一つですが、最近は早期発見される症例があり、そのような早期の症例では、口から内視鏡を入れて癌を切除する方法も行われています。しかしある程度進行している症例では、手術、放射線治療、抗がん剤治療を併用した治療が行われます。

 

最後に

 どの部位の腫瘍でも、癌をしっかり治すことが治療の上で最も重要であることは勿論です。
しかし、中咽頭や下咽頭は喉頭に近く、癌の広がりによっては喉頭を同時に摘出することが必要な症例があります。喉頭がなくなると声が失われことになり、術後の生活に大きな影響が出ることが考えられます。最近では可能な限り機能を温存することも治療後の生活に大切であることが認識され、癌の根治と機能温存の両者を追及して治療方法が選択されるようになってきています。機能温存が可能かどうかは、癌の広がり、全身状態など様々な要因を総合的に考えて決める必要があり、主治医を充分話し合うことが大切と思います。

 また、咽頭は食物通路であるため、手術で摘出した後、食物通路を再建する必要があり、腹直筋と腹部の皮膚、あるいは腕の皮膚を頸部で動脈と静脈を繋いで移植し、術後の食事を可能にしています。

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